Ranun’s Library

書物の森で溺れかける

挫折したあの日へ還り、あえてハードカバーで読んでみた 『百年の孤独』G・ガルシア=マルケス

文庫版が発売され話題沸騰中の、ガルシア・マルケスの『百年の孤独

昔ハードカバーの表紙に惹かれて購入したものの、挫折して放置していた。

せっかくだからこれを機に、なんとか読み切りたい! と思った。

しかしあの日に還るには、文庫版ではなく、あのハードカバーの、あの本でなくてはならない。

と、意味もなく、そう自分に言い聞かせた。

10日かけて読み終わったいま、

完走できたことがただただ嬉しくて、放心状態の只中にいる。


百年の孤独
百年の孤独G・ガルシア=マルケス 鼓 直訳, 新潮社 , 2002
原タイトル  Cien Años de Soledad , 1967


読了後、改めて表紙の絵を見て驚いた。

たった一枚の画が! この壮大な魔術的リアリズムを、あたかも縮小したように、如実に物語っているではないか! と。

中心にある大きな塔は、この物語の祖、ホセ・アルカディオ・ブエンディアを表わし、連なった建物はその一族としよう。

建物の凸凹は、繰り返される繁栄と破壊を意味し、最後は突然終わっている。

再生の可能性もない。

どの建物も、祖を越えた高さのものはないようだ。

うずを巻く建物は光をまとっているのに、その間にある運河と空は暗雲が立ち込めている。

その対比は神秘的だ。

そして人々は、いとも個性的な乗り物に乗って、一人ぼっちで進んでいる。

表情こそ見えないが、各々が孤独を抱えているように見える......。

と、これはあくまで私の解釈にすぎない。

調べてみると、

この絵が描かれたのは1962年ということで、『百年の孤独』が発表された1967年より少し前だということがわかった。

なので『百年の孤独』を意識して描かれたわけではなさそうだ。

画家はスペイン出身のレメディオス・ヴァロ(1908-1963)。

メディオスといえば、奇しくも物語に登場する、あの昇天した美女と同名だ。

絵のタイトルは「スパイラル・トランジット」

以下のサイトで画像が鮮明に観られます。

https://educacion.ufm.edu/remedios-varo-transito-en-espiral-oleo-sobre-tela-1962/

記事の解説を抜粋すると、
「魔法とダイナミズムを表現している・・・

時代が残した神話的で忘れ去られた過去へ私たちを連れ戻す・・・

塔に囲まれた人物が表す内なる世界について、自分自身のビジョンの探求を暗示している」とのこと。

偶然とは思えない相性の良さに驚いてしまう。

というか、もうこれだけでこの物語の解説は充分ではないだろうか。

個人的にはツッコミどころがたくさんあって、ひとつずつ取り上げたいのだけど、私には安易に文字化する技術がない!

ガルシア=マルケスが18カ月書斎に籠って書き上げたという「マジック・リアリズム」を、是非多くの人に読んでもらいたい。

読むにあたってオススメするのは、読みながら登場人物をメモしていくこと!

なぜなら6代にわたる一大絵巻には、同じ名前が嫌ほどでてきて訳が分からなくなるからです。

これをしっかりやると最後まで挫折せずに読める、と断言しよう。

本の中にも家系図はあるけれど、自分で書くほうが断然理解が進みます。

実際私がメモしたA4ノートは、10ページに及びました。
(字が大きいのもある)

そしてもうひとつは、できるだけ間をおかずに一気に読むこと!

超スピーディーな展開についていくためでもあるし、

なにより登場人物の名前を忘れてしまうからです。
(やっぱりそこ?)

空き時間は全て読書に費やす覚悟で!

がんばろう!

そうして読了したあかつきには、なんだかすっきり、ジクソーパズルが完成したときのような達成感と、付け加えるなら「悲哀」にどっぷり浸ることができます。

その後の放心状態も、ぜひ味わってみてください。


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※参考文献
ガブリエル・ガルシア・マルケスの研究 : 『百年の孤独』と魔術的リアリズム
都留文科大学研究紀要(58), 61-74, 2003 依藤道夫
●『ラテンアメリカ文学ガイドブック』
 勉誠出版, 2020 寺尾隆吉


※こちらも読んでみました『ガルシア=マルケス中短篇傑』
ranunculuslove.hatenablog.com