Ranun’s Library

書物の森で溺れかける

2021-01-01から1年間の記事一覧

ナイン・インタビューズ『柴田元幸と9人の作家たち』~カズオ・イシグロ~

ナイン・インタビューズ 柴田元幸と9人の作家たち作者:ポール・オースター,村上春樹,カズオ・イシグロ,リチャード・パワーズ,レベッカ・ブラウン,スチュアート・ダイベック,シリ・ハストヴェット,アート・スピーゲルマン,T・R・ピアソンアルクAmazon本書は翻…

『忘れられた巨人』”The Buried Giant” カズオ・イシグロ

『忘れられた巨人』(The Buried Giant, 2015) は、カズオ・イシグロ、7作目の長編小説です。これまでの作品と違い、三人称の語りになっているところに新鮮味を感じます。なかには登場人物が前面に出てきて、主観的に語る章もあります。さまざまな視点から物…

悪夢は毒へ『セメントガーデン』イアン・マキューアン 

イアン・マキューアンの長編デビュー作、 『セメントガーデン』を読了。 (原題:The Cement Garden , Ian MacEwan , 1979 )セメント・ガーデン (Hayakawa novels)作者:イアン マキューアン早川書房AmazonThe Cement Garden (Vintage International)作者:McE…

「砂の本」J.L.ボルヘス 

J.L.ボルヘスの「砂の本」を読了。 (集英社 , 1987, 篠田一士訳 (原タイトルEl libro de arena 1975)砂の本 (現代の世界文学)作者:ボルヘス,ホルヘ・ルイス・ボルヘス集英社Amazon 同じものがこちらの最初の章にあります。 集英社ギャラリー「世界の文学」…

ボルヘスの愛したベアトリス「アレフ」

J.L.ボルヘスの短編「アレフ」を読みました。 短く簡潔な文章で、幻想的な世界を描くという作風で知られているボルヘス。 私にとっては、どの作品も決して簡潔な文章とは思えず、何度か読み返してなんとか理解できるほどのものです。 文章全体ではやや難解さ…

「記憶の人・フネス」J.L.ボルヘス 

わたしは彼をおぼえている(わたしはこの霊的な動詞をつかう権利をほとんど持ち合わせていない。この世でただひとりだけ、その権利に値する男がいたが、彼は死んでしまった)、わたしは彼をおぼえている。 から始まるこのお話、ただごとではなさそう。 その…

『わたしを離さないで』"Never Let Me Go" カズオ・イシグロ

『わたしを離さないで』Never Let Me Go (2005) はカズオ・イシグロの6番目の長編小説です。 2010年には映画Never Let Me Goが公開され、 日本でも2016年にドラマ『わたしを離さないで』が放映されました。 わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)作者:カズ…

『日の名残り』”The Remains of the Day” カズオ・イシグロ

『日の名残り』(The Remains of the Day, 1989 )は、カズオ・イシグロの三作目の長編小説です。1989年には、イギリスで最も権威のあるブッカー賞を受賞した話題作。1993年に映画化されてからも、長く愛され続けています。 日の名残り ノーベル賞記念版作者:…

カズオ・イシグロ ノーベル賞記念講演『特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー』

カズオ・イシグロの『特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー』(2018) は、2017年ノーベル賞受賞後の、記念講演を書籍化されたものです。特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー ノーベル文学賞受賞記念講演 (早川書房)作者:カズ…

『浮世の画家』"An Artist of the Floating World" カズオ・イシグロ

『浮世の画家』(An Artist of the Floating World, 1986 )は、カズオ・イシグロの2作目の長編小説。デビュー作『遠い山なみの光』に続き、戦後の日本を舞台にしています。1986年、ウィットブレッド賞を受賞。 浮世の画家〔新版〕 (ハヤカワepi文庫)作者:カ…

『戦争のすんだ夏』"The Summer after the War " カズオ・イシグロ

カズオ・イシグロ著『戦争のすんだ夏』(The Summer after the War,1983 )は、雑誌『Esquire 日本語版』1990年12月(36号) に掲載された短編小説です。 3年後に出版される『浮世の画家』の原型といわれています。 原文は、A Family Supperと共に収録されてい…

毒を盛られて "Getting Poisoned" Kazuo Ishiguro    

カズオ・イシグロの初期短編のうちの一つ Getting Poisoned (1981) 『中毒になる』あるいは『毒がまわる』でしょうか。Introduction 7 : stories by new writers,1981 に含まれています。和訳は今のところありません。Introduction: No. 7: Stories by New W…

『遠い山なみの光』”A Pale View of Hills“ カズオ・イシグロ

『遠い山なみの光』(A Pale View of Hills,1982)は、 カズオ・イシグロの長編デビュー作です。 1982年、王立文学協会ウィニフレッド・ホールトビー賞を受賞しました。 当初『女たちの遠い夏』(1984 ) というタイトルだったことはあまり知られていませんが、…

『ある家族の夕餉』"A Family Supper" カズオ・イシグロ

カズオ・イシグロ著、A Family Supper『ある家族の夕餉』あるいは『夕餉』は、雑誌『Quarto』(1980) に収録された短編小説です。デビュー作『遠い山なみの光』(1982) の約1年前になります。 のちに雑誌『Esquire』(1990) に再録され、こちらはネット上で読…

『わたしたちが孤児だったころ』"When We Were Orphans" カズオ・イシグロ

『わたしたちが孤児だったころ』 (When We Were Orphans ,2000) は、カズオ・イシグロの長編小説第5作目で、 ブッカー賞の最終候補に選ばれた作品。わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)作者:カズオ イシグロ早川書房AmazonWhen We Were Orphans作…

『クララとお日さま』”Klara and the Sun” カズオ・イシグロ

『クララとお日さま』Klara and the Sun は、カズオ・イシグロが2017年にノーベル賞を受賞したあと、初となる長編小説です。[asin:B08VNF8481:detail]Klara and the Sun: The Times and Sunday Times Book of the Year (English Edition)作者:Ishiguro, Kazu…

『チェリスト』Cellists カズオ・イシグロ

『夜想曲集 』(2009) Nocturnes : five stories of music and nightfall 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語の、最後のおはなし 「チェリスト」(Cellists)夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語作者:カズオ・イシグロ早川書房Amazon 最後はハンガリー人であ…

『夜想曲』Nocturne カズオ・イシグロ

『夜想曲集 : 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』(2009) Nocturnes : five stories of music and nightfall 音楽にまつわる5つの短編集の中の、 『夜想曲』Nocturne夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)作者:カズオ イシグロ早川書房A…

『モールバンヒルズ』Malvern Hills カズオ・イシグロ

『夜想曲集 : 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』(2009) Nocturnes : five stories of music and nightfall 音楽にまつわる短編集の3つめのおはなし。 『モールバンヒルズ』(Malvern Hills)夜想曲集 (ハヤカワepi文庫)作者:カズオ・イシグロ,土屋 政雄早川書…

『降っても晴れても』Come Rain or Come Shine カズオ・イシグロ

『夜想曲集 : 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』(2009) Nocturnes : five stories of music and nightfall 音楽にまつわる短編集の2番目に登場するドタバタ劇。 『降っても晴れても』(Come Rain or Come Shine)夜想曲集 (ハヤカワepi文庫)作者:カズオ・イシ…

『老歌手』Crooner カズオ・イシグロ

『夜想曲集 : 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』Nocturnes : five stories of music and nightfall(2009) 、音楽にまつわるの大人の短編集。 夜想曲集 (ハヤカワepi文庫)作者:カズオ・イシグロ,土屋 政雄早川書房Amazon 5つある短編の中でも、最も切なく哀…

『日の暮れた村』"A Village After Dark" カズオ・イシグロ

カズオ・イシグロ著『日の暮れた村』A Village After Dark は『充たされざる者』(1995) の下準備としてかかれた短編小説です。世に出すつもりはなかったというが、どういうわけか雑誌 ”The New Yorker” ( 2001.5 ) に掲載されたという謎の裏話があります。 …

『充たされざる者』"The Unconsoled" カズオ・イシグロ

『充たされざる者』(The Unconsoled ,1995 )は、カズオ・イシグロの4作目の長編小説で、1995年イギリスでチェルトナム文学賞を受賞しました。 後にも先にも類をみない、最も長いおはなしです。文庫本でなんと900頁を超える分厚さを見て、手を出せずにいまし…