Ranun’s Library

書物の森で溺れかける

ラテンアメリカ文学

「大佐に手紙は来ない」ガルシア=マルケス

ガブリエル・ガルシア=マルケスの中篇小説「大佐に手紙は来ない」(原タイトル:El Coronel No Tiene Quien le Escriba , 1961)を読みました。『百年の孤独』の余韻が冷めやまぬうちになんとか読み終えました。ガルシア=マルケス中短篇傑作選 (河出文庫)…

誰もが愛するものに殺される『南部』J.L.ボルヘス

ボルヘスの短篇「南部」を読みました。 『伝奇集』の最終章に収録されていて、ボルヘスが最も気に入っている作品のひとつです。 『伝奇集 』(鼓直訳、岩波文庫、1993)原タイトルFicciones (1935-1944) ボルヘスの作品は、私はだいたい2回以上読まなけれ…

挫折したあの日へ還り、あえてハードカバーで読んでみた 『百年の孤独』G・ガルシア=マルケス

文庫版が発売され話題沸騰中の、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』昔ハードカバーの表紙に惹かれて購入したものの、挫折して放置していた。せっかくだからこれを機に、なんとか読み切りたい! と思った。しかしあの日に還るには、文庫版ではなく、あのハー…

本当は怖い「バベルの図書館」

ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899-1986)の「バベルの図書館」を巡っては、世界中の読者の想像力を掻き立ててきたことだろう。私もそのひとり。出会いのきっかけは、映画『薔薇の名前』(原作、同タイトル Il nome della rosa ウンベルト・エーコ著 , 1980 )…

珠玉の文学的遺書:ボルヘスの『シェイクスピアの記憶』

昨年末出版されたばかりの「シェイクスピアの記憶」は、ボルヘスによる最晩年の作品。 「文学的遺書」とも呼ばれている。 数多ある短編のなかで、唯一翻訳されていなかった作品だと知り驚いた。 本邦初邦訳ということで、大変ありがたく読ませていただいた。…

奇妙な創造物の小冊子『幻獣辞典』J.L.ボルヘス

ボルヘスの『幻獣辞典』を読みました。幻獣辞典作者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス晶文社Amazon幻獣辞典 (河出文庫)作者:ホルヘ・ルイス ボルヘス河出書房新社Amazon 原タイトル : El libro de los seres imaginarios El libro de los seres imaginarios/ The Bo…

『アトラス : 迷宮のボルヘス』 J.L.ボルヘス

ボルヘス晩年期の世界旅行記『アトラス』。アトラス: 迷宮のボルヘス (エートル叢書 10)作者:ホルヘ・ルイス ボルヘス現代思潮新社Amazon原タイトル:Atlas , 1983 本書は実に不思議である。 まさに副タイトルのごとく、迷宮の旅へのいざない。ページをめく…

城壁と書物『続審問』J.L.ボルヘス

ボルヘスは、書物と図書館をこよなく愛した人である。 そしてまたユニークな一面も持ち合わせていた方だと私は思う。 エッセイ集『続審問』(Otras inquisiciones 1937-1952) でも、そのことが節々にうかがえる。38タイトルから成るこの評論集は、おもに文学…

「砂の本」J.L.ボルヘス 

J.L.ボルヘスの「砂の本」を読了。 (集英社 , 1987, 篠田一士訳 (原タイトルEl libro de arena 1975)砂の本 (現代の世界文学)作者:ボルヘス,ホルヘ・ルイス・ボルヘス集英社Amazon 同じものがこちらの最初の章にあります。 集英社ギャラリー「世界の文学」…

「記憶の人・フネス」J.L.ボルヘス 

わたしは彼をおぼえている(わたしはこの霊的な動詞をつかう権利をほとんど持ち合わせていない。この世でただひとりだけ、その権利に値する男がいたが、彼は死んでしまった)、わたしは彼をおぼえている。 から始まるこのお話、ただごとではなさそう。 その…