インドはゴンド族の、木にまつわる神話をご紹介。
この圧倒的な存在感を放つ大型絵本は、なんと一冊一冊が手作りなのです。
驚くほど美しい発色と、手にすっと馴染みむ温かい感触。
部屋にそっと立てかけておけば、絵画をみるように、ずっと眺めていたくなります。
私はこの絵本を2019年、京都の細見美術館で購入しましたが、そのとき映像で流れていた作業工程を、食い入るように見ていたのを覚えています。
インドの職人さん達が、まず紙となる繊維を溶かし(そこから!)、手ですいて乾燥させ、そこに一枚ずつシルクスクリーンで印刷、最後の製本まで丁寧に仕上げられていました。
こうして完成した本の裏表紙には、右下に、手書きでシリアルナンバーがかかれているのです。
少し見えにくいですが、3000冊のうちの721番ということで、世界に一つだけの本なのです。
私のもっている本はおそらく最新版(14版)ですが、2006年の初版から、何度も重版され、その都度違う表紙になっています。
日本語版の出版社「タムラ堂」のホームページに、その素敵な表紙の数々がみられます。
www.tamura-do.com
さて、気になるのはこの絵本の中身について。
ゴンドの3人の有名アーティストが描いた19の木の絵と、それにまつわる伝説や神話が描かれています。
夜になると本性を現わすという、森の木々の不思議が短くまとめられていて、その神秘な世界に一瞬にして惹き込まれていきます。
聖なる魂が宿る木、
木の創造主のおはなし、
葉と同じ形をする木、
小鳥のような実をつける木、
大蛇が絡み合う木、
人びとから畏れられた木、などなど、
どれも魅惑的で、大人も子供も楽しめる内容になっています。
なかでも私のお気に入りはこの2つ。
一つ目は、ホタルで埋め尽くされた樹。
道に迷った牛飼いを、一匹のホタルがここまで案内します。
暗闇のなか、宝石のように輝いています。
もうひとつは、酔いの樹。
少し飲むなら病に効くけれど、
飲み過ぎると、このように変身して樹になってしまいます。
その人のキャラにより、変身する生き物が決められるとか、、、。
寓意的で面白いですね。
本作は、2008年「ボローニャ・ブックフェア」でラガッツィ賞を受賞し、世界で注目を集め続けています。
ページをめくるたびに力強く現れる樹々、
心躍るような贅沢なひとときを、
ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。